解 剖 体 慰 霊 祭


令和5年度 埼玉医科大学解剖体慰霊祭

(令和
5年11月30日発行 埼玉医科大学学内報 第232号 より転載)


 

◇◇◇ 令和5年度解剖体慰霊祭 ◇◇◇

 令和5年10月21日(土)、第51回埼玉医科大学解剖体慰霊祭が創立30周年記念講堂においてしめやかに執り行われました。

 今年度の解剖体慰霊祭は、新型コロナウイルス感染症感染防止の観点から、規模を縮小いたしましたが、ご遺族、ご来賓、教職員、医学部、保健医療学部の学生等、約270名が参列し、令和471日から令和5831日までの間にご献体いただいた301柱(篤志献体57柱、病理解剖66柱、法医解剖等178柱)の御霊に祈りを奉げました。

 国際医療センターの佐伯俊昭病院長が芳名録を祭壇に捧呈し、祭主である竹内勤学長が追慕のことばを、医学部2年生 澤田百花さんと保健医療学部看護学科1年生 橋琢磨さんが学生代表として感謝のことばを述べ、指名献花、病理学山田健人教授の閉会の挨拶の後、参列者全員の献花が行われ、閉式となりました。

 私達、全ての教職員・学生は、献体された多くの方々の崇高な思いと命の尊厳を各自の礎として、改めて心に刻むとともに、ご献体頂いた皆様のご遺志と、ご遺族の方々のご理解に深く感謝し、心から御礼を申し上げます。

 


追慕のことば  

 埼玉医科大学 学長 竹内 勤

 本日は、ご遺族ならびにご関係の皆様にご臨席を賜りまして、解剖体慰霊祭を開催できますことを、心より感謝申し上げます。本来であれば、より多くの方にご臨席いただき、時間的にも余裕を持って式典を執り行うところですが、本年も規模を縮小しての開催となりますことを、ご了解賜りたく存じます。

 さて、この一年間に、多大なるご理解とご貢献を賜りました301名の皆様に、ここに謹んで追慕と哀悼の意を捧げます。医学のさらなる進歩のため、そして医学と医療に従事する人材を育成するため、ご貢献いただいた皆様の崇高なるご遺志に対し、心からの敬意と感謝を捧げるものであります。

 また、ご遺族の皆様におかれましては、強い絆で結ばれました方を亡くされた悲しみの中にもかかわらず、ご遺体の解剖をお許しいただきましたこと、重ねまして感謝申し上げます。

 医学・医療を志すものにとって、解剖を通じて人体の構造と機能を学ぶことは大変重要なことです。人工知能や仮想現実など、科学の進歩は著しいものがありますが、生命の大切さを理解する上で実際の体験には遠く及びません。人体解剖は、医療の専門家となるために欠くことのできない学習です。その学習の場は、それに臨む心構え、全身全霊をかけて五感すべてで学ぶ、大変貴重で厳粛なものです。同時に、献体された方々やそのご遺族に思いを馳せることによって、医の倫理についても深く学ぶことになります。さらに、これから医療人を目指す学習者のみならず、すでに医療に従事している医師、医療従事者、研究者にとりましても、病気の原因を明らかにし、より良い治療法を開発し、広く社会に貢献して行く崇高な気持ちを強固にする大変貴重で、重要な機会となります。

 ご献体をいただきました故人の方々、そしてご遺族の皆様から、医学・医療の進歩と発展のためお力添えを頂きましたことに対し、改めましてここに感謝を申し上げます。

 皆様のおこころざしを心の糧として、私ども、教職員と学生一同は、これからも精進を続けることを決意し、故人の御遺徳にお応えすることを、ここにお誓い申し上げます。心安らかなご冥福をお祈り申し上げ、追慕の言葉とさせていただきます。

 令和51021

 埼玉医科大学 学長 竹内 勤

 

 

感謝のことば  

 
医学部 学生代表  澤田 百花 

 本日は、ご遺族並びに関係各位のご列席を賜り、令和五年度解剖体慰霊祭が執り行われるにあたりまして、埼玉医科大学医学部の学生を代表して、感謝のことばを述べさせていただきます。

 私たち二年生は、四月から構造系実習として、献体してくださった方々に人体の構造と機能について本当に多くのことを教えていただきました。実習に入る前に、担当の先生方から献体やご遺族に対する感謝の思い、実習にあたって、もつべき心構えや責任に関してのご指導があり、それにより私たち学生は、実習に対し真摯に向き合うことを誓いました。献体により実習を支えてくださった方々、家族のご遺体を私たち学生に託してくださったご遺族の方々にあらためて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 実習初日に実際にご遺体と対面したとき、自身のお身体を提供し医学教育の発展に寄与する決定をされたご本人や、その思いに理解を示してくださったご遺族の方の気持ちを無駄にしないようにしっかり学ばなければならないと決意したことを今でも覚えています。

 実際に実習が始まると、人体がいかに理にかなった構造をしているか、ヒトが設計するよりはるかに複雑で正確な機能をもっているかを知り、生まれつきそのような仕組みをもっていること、私たちがいま生きていることに対し、生命の神秘を感じました。また、実習は、解剖学の勉強になっただけでなく、その方が確かに生きていたという証を様々なところで実感し、命の尊さをも学ぶことができました。名前も、人となりも存じ上げませんが、その方がおいしいものを食べたり大切な人と語り合ったり、時には苦しみを感じたりしながらも人生を全うされたことが体の至るところから感じ取ることができました。多くの方々のご協力があって初めて私たちは医学を学ぶことができるのだとしみじみと感じました。

 全二十四回の構造系実習は毎回毎回とても充実した実りある時間でした。一生に一度のかけがえのない学びの場でした。実習が終わった今、私はご遺族の皆様への感謝の気持ちでいっぱいです。私は自信をもって、大切なご家族のお体で、実習を全うしたといえると思うからです。

 まだまだこれから道のりは長いですが、ここで学んだことや感じたこと、感謝の気持ちを思い出しながら日々勉学に励み、社会に貢献できる医療人になることで亡くなられた方やご遺族の皆様に恩返ししたいです。献体してくださった方々のご冥福を心よりお祈りして、感謝のことばとさせていただきます。

 

 

感謝のことば  

 保健医療学部 学生代表  高橋 琢磨 

 解剖体慰霊祭にあたり、埼玉医科大学保健医療学部の学生を代表し、生前、その大事な御身体を捧げて下 さった方々、そのご遺志を理解し、同意してくださったご遺族の方々に対し、心より深く感謝申し上げます。

 保健医療学部には、看護学科、臨床検査学科、臨床工学科、理学療法学科の四学科があり、医療現場における専門家として患者さまへ十分な医療を提供することが出来るよう、それぞれの専門領域について日々勉強しております。

 私は現在、看護学科の一年生です。将来、看護師として、患者さまとそのご家族様、そして地域で暮らす全ての皆様の健康のために最善を尽くせる看護師を目指し、進歩していく医療知識や技術に引けを取らないように勉強に取り組んでおります。

 看護学科では「人体の構造と機能」という授業で、ヒトの体のつくりや働きを学修します。教科書だけではなく、実際に解剖学実習を通して、ご献体や標本をもとに学修に取り組み、大変貴重な学びを得ることができました。

 この解剖学実習を通して、ご遺体を直接観察し学ばせていただくことによって、教科書だけでは理解できなかった構造をより詳細に理解することができました。そして、なにより、命の尊さを実感するとともに、人の命を預かる医療従事者になるという責任と、確かな覚悟をあらためて実感いたしました。

 最後になりますが、私たち保健医療学部の学生は、ご献体いただいた方々の思い、そしてそのご遺志に賛同してくださったご遺族の皆様の思いに、心から感謝の念と敬意を表します。また、その皆様へのご恩と感謝の気持ちを忘れずに、それぞれの専門知識や技術、病気や怪我を抱える患者様やご家族様に寄り添う心を身に付けられるよう日々努力を重ね、社会に貢献できる医療従事者になることを、お誓い申し上げます。

 

 


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